健康経営優良法人の申請方法と書き方のポイントPart3
健康経営優良法人の申請書作成の続き
申請書の概要
申請書には、「企業情報」、「経営理念・方針」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価改善」、「法令順守・リスクマネジメント」を入力する必要があります。「企業情報」、「経営理念・方針」、「組織体制」については、前のページで説明いたしました。
このページでは、申請する企業が健康経営に係る「制度・施策実行」を、どの程度行っているかを回答する項目について解説していきます。
制度・施策実行の書き方
制度・施策実行に関する設問は、申請書の中で最も多い質問数となっています。大まかな設問内容に分けて解説していきます。大まかな設問におけると以下の通りです。全部で19項目ありますが、全てを達成する必要はありません。
- 健康経営の推進状況と現状(全4項目)
- 職場の働き方(全7項目)
- 健康増進への取組(全7項目)
- 受動喫煙に対する取り組み
健康経営の推進状況と現状(全4項目)
具体的には以下の4つの項目です。すべてを達成する必要はなく、1つ目の「健康経営の具体的な推進計画」は必須ですが、残りの3つの項目は3項目中2項目を達成していれば認定条件を満たすことができます。また、小規模事業者に該当する場合は、「健康経営の具体的な推進計画」が必須ではなく、4項目中2項目を達成すれば認定条件を満たすことができます。実務上はストレスチェックの実施をしている企業は少ないため、残りの項目で達成することが肝要です。
- 健康経営の具体的な推進計画
- 健康診断の実施率実質100%
- 健康診断の受診推奨への取組
- 50人未満の事業所におけるストレスチェックの実施
達成の難易度から、中小企業の場合は、「健康経営の具体的な推進計画(必須項目)」+「健康診断の実施率実質100%(選択項目)」+「健康診断の受診推奨への取組(選択項目)」をクリアするのが良いかと思います。また、小規模事業者の場合は、「健康経営の具体的な推進計画(選択項目)」+「健康診断の受診推奨への取組(選択項目)」の2項目の達成が簡単です。
健康経営の具体的な推進計画
健康経営の具体的な推進計画に関する設問は以下の通りです。健康経営に関する課題を策定の仕方について記載し、その課題を記載します。あくまで申請時点での課題の設定であるため、課題を設定していない事業者は申請時までに設定してください。

また、課題に対する施策についても記載が必要です。課題と関連付けた対策を記載してください。施策に対する目標、、実施時点での進捗、目標に対する尺度、責任者を記載してください。目標や尺度は数値的に表せるものがよいです。そのため、体重やBMI、コレステロール値などの健康診断の数値や、予防接種受診率、育休取得率などの具体的な数値があるほど良いとされています。

健康診断の実施率実質100%
直近の健康診断受診率を記載してください。ここの人数は、従業員なので役員は含みません。対象の時期は、2025年が受診済みなら2025年ですが、今期未受診なら2024年の受診率を使うこともできます。
基本的には対象人数に対する受診率は100%である必要があります。しかし、対象受診者数が20人以上かつ受診率95%以上、20人未満で未受診が1人であるならば、追加の設問を答えることで要件を満たすことができます。
対象除外人数とは、「傷病や産休などの受信できなかった人数」や、「パート・アルバイトなどの内、規定労働時間が正社員の3/4の非正規雇用者」のことです。また、2024年の受診データを使う場合、その人数から検診受診期間後退職人数に参入してください。

健康診断の受診推奨への取組
本項目は、健康診断の受診を従業員に進めているかについての記載です。特定の手段に限定していませんので、申請日までに、口頭で伝えても達成できる項目です。

50人未満の事業所におけるストレスチェックの実施
従業員が50人以上の事業所があれば、ストレスチェックは義務となっていますが、多くの中小企業では義務化されていません。そのため、本項目を達成できる企業は多くありません。他の要件を達成することができていれば、無理にストレスチェックをする必要はありませんので、本設問は捨て問題にすることが多いです。

職場の働き方(全7項目)
具体的には以下の7つの項目です。すべてを達成する必要はなく、7項目中2項目を達成していれば認定条件を満たすことができます。ただし、小規模事業者でも条件の緩和はありません。
- 管理職や従業員への研修・情報提供
- 適切な働き方実現への取組
- 仕事と育児の両立に向けた環境づくり
- 仕事と介護の両立に向けた環境づくり
- 社内のコミュニケーション促進
- 仕事と治療の両立に向けた環境づくり
- 女性従業員の労働環境づくり
- 高齢従業員の労働環境づくり
達成の難易度は、「健康をテーマにした情報提供」+「管理職や従業員への研修」をクリアするのが良いかと思います。
管理職や従業員への研修・情報提供
以下の1~6のいづれかを行っていれば達成となります。研修動画を社内で視聴するだけでも達成となるため、達成は容易な項目です。

ただし、この項目に該当する場合は、その詳細を記載する必要があります。私は面倒なので、本項目は未達成にして場越の項目で達成数を稼いでいます。詳細は以下の項目になります。

加えて、従業員向けにメールなどで発信を行っていれば、達成となる項目です。また、上記の「管理職や従業員への研修」を達成している場合は、月1回未満の頻度での情報提供で構いません。理論上は、研修を行ったうえで、1度の情報提供を行えば、達成となります。

適切な働き方実現への取組
世間一般で言うところの働き方改革に関する施策を行っているかどうかについて回答する設問です。複数回答できますが、多く回答することによるメリットはありません。大きく分類すると、勤務時間、休暇、柔軟な働き方についてです。

仕事と育児の両立に向けた環境づくり
従業員の看護休暇などを認めていれば、達成となります。また、育児に関する相談を聞く担当を、申請時点で任命すれば達成することができます。

仕事と介護の両立
上記の育児と同様の項目です。従業員の介護に関する状況などを把握すれば、達成できる項目です。本申請とは別に、介護の可能性や状況を会社が把握しておくことは、人員配置の観点から非常に有効な手段であるため、強くお勧めします。

社内のコミュニケーション促進
端的にいううとLINEもSNSです。会社や部署が主導してLINEグループを作るだけで、2の項目を達成することができます。LINE以外のChatWORKなどでも構いません。

仕事と治療の両立に向けた環境づくり
長期療養やメンタルの不調などで、休職する場合や治療のための施策に関する項目です。しかし、私としてはあまり達成しにくい項目だと考えています。絶対数が少ないため、認定取得のためにはあまり効果的とは言えません。

女性従業員の労働環境づくり
女性特有の心身の不調に関する施策の有無です。達成しやすいものは、11や15の項目です。どの程度の配慮化は明記されていないため、女性用更衣室を休憩所にしたり、常識的な配慮をすれば問題ありません。また、女性の従業員がいない場合は、いたとしたら配慮するのであれば達成で構いません。

高齢従業員の労働環境づくり
高齢の従業員に対する施策の有無に関する設問です。担当業務への配慮や、そもそも高齢の従業員がいなければ達成となります。

健康増進への取組(全7項目)
具体的には以下の7つの項目です。すべてを達成する必要はなく、7項目中4項目を達成していれば認定条件を満たすことができます。ただし、小規模事業者の場合は、4項目ではなく2項目の達成で済みます。
- 保健指導の実施と機会提供
- 食生活の改善
- 運動機会の増進
- 長時間労働への対応
- 心の健康の維持増進
- 感染症予防
- 喫煙率の低下
達成の難易度から、「保健指導の実施と機会提供」+「長時間労働への対応」+「心の健康の維持増進」+「感染症予防」をクリアするのが良いかと思います。
保健指導の実施と機会提供
いわゆるメタボの人間に対する保健指導についての設問です。達成が容易なものは、保健指導をオンラインで受けられるように社内にPCとZOOMを用意して、個室があれば達成できます。

食生活の改善
食生活に関する施策の有無についての設問です。しかし、本項目は達成しにくいものと考えています。ただし、職場の自販機などに、野菜ジュースがあれば達成できますし、会社で仕出し弁当などを注文していれば、それで達成とすることができます。

運動機会の増進
運動習慣に関する設問です。こちらも食生活と並んで達成しにくい項目です。食堂や休憩室にダンベルや、握力トレーニング用のグリップを置いておけば、10を達成できます。

長時間労働への対応
月80時間以上の残業を行っている従業員に対する施策についての設問です。達成しやすいものは、役員や上司による面談です。

心の健康の維持増進
従業員の心の問題に関する対応策についての設問です。人事評価ではない上司との面談などが達成の難易度としては低いです。

感染症予防
予防接種や感染症対策に関する設問です。予防接種に関する施策は、行っていない場合も多くあると思うので、換気のルール設定などが比較的簡単です。

喫煙率の低下
職場における喫煙ルールについての設問です。達成しやすいものは6のみです。喫煙を行ってよい時間帯の設定です。制限する幅に関する基準はないため、休憩時間中のみに制限するだけでも問題ありません。また、ルールの設定とルールの遵守は別の問題です。この後の設問に、喫煙エリアに関する設問があるため、喫煙場所に関する制限は本項目の対象外です。

受動喫煙への取組(必須)
この項目は、必須項目となっています。施設には、第一種施設と第二種施設の2種類があり、第一種施設は学校などの公的な空間を指します。そのため、中小企業の申請の場合は、第二種施設と考えれば問題ありません。屋内と屋外でそれぞれの喫煙の可否によって回答が変わります。
- 屋内外問わず全面禁煙なら1
- 屋内は全面禁煙かつ、屋外は喫煙所のみ喫煙可なら2
- 屋内は喫煙所を設置している事業所と全面禁煙の事業所が混じり、屋外には喫煙所設置か全面禁煙なら3
- 屋内外に喫煙所を用意しているなら4
- 喫煙所を設けていない屋内、屋外があるなら5(不適格)
- 回答したくないなら6(不適格)

まとめ
本項では、申請するにあたっての企業の情報、申請書の内容のうち「制度・施策実行」の項目に関する書き方について記載しました。次回は、「評価改善」、「法令順守・リスクマネジメント」の項目について解説します。また、弊社では申請書の作成のお手伝いも行っているので気軽にご相談ください。
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